毎日、誰かしらが赤鬼の家にやって来る。贈り物を持って来る者もいるし、蔵から物を持ち去る者もいる。しかしみんな赤鬼を見ると笑顔で声をかけ、赤鬼は嬉しそうに、あほのように茶菓子をふるまう。俺はその様子を毎日見ていた。俺の家は丘の中腹にあって、鬼の眼で観ればかなりの距離まで子細に見える。始めは、『俺の行為が赤鬼の生活を変えた』という興奮を持って見ていた。興奮が収まると、朗らかな姿に愛おしさを感じた。し

以下あらすじ とある山の中に、一人の赤鬼が住んでいた。赤鬼はずっと人間と仲良くなりたいと思っていた。 そこで、「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」という立て札を書き、家の前に立てておいた。 しかし、人間たちは疑い、誰一人として赤鬼の家に遊びに来ることはなかった。赤鬼は非常に悲しみ、信用してもらえないことを悔しがり、終いには腹